為替デリバティブ・外国為替証拠金取引(FX)・通貨オプション取引
外国為替証拠金取引(FX)とは、差金決済取引であり、為替相場の変動という不確定要素に資金を投入するため、よりギャンブルに近い要件に該当しますが、法令の範囲内で行う限りにおいては適法なものとなり得ます。
ニュースなとでよく見る、本日は「ドル円が暴落」「ポンドがドルに対して暴落」といったような投機的なトレードのことです。
FXってどんな取引なの?
取引としては、当事者が将来の一定の期日において、通貨等及びその対価の授受を約する売買取引となります。
通貨を「買い」や「売り」といったポジションで建てて、売戻し又は買戻しをしたときに生じる差額を受け取ります。それによって、利益が発生したり損失が発生したりします。(金融先物取引法2条2項1号、同条4項1号)
違法性はあるの?
非取引所取引での売買の場合、過去の裁判例において、外国為替証拠金取引自体が違法であると判断した例もあります。
商品先物取引の場合と同様に、外国為替証拠金取引についても、業者の勧誘方法・顧客の知識の度合い・業者からの十分な説明が必須となります。
外国為替証拠金取引・FXも、適合性原則違反・説明義務違反・不当勧誘等の違法性が認められることが多数あります。
解決までの流れ
基本的には先物取引・商品先物取引の場合と同様です。
違うところといえば、外国為替証拠金取引業者の場合ですと、「会社の信用であったり十分な資本がない、小規模業者が多い」ことが挙げられます。そこで当事務所ではどうするかというと、確実かつ早急に解決するために、業者の財産があるうちに仮差押えをしたり、取締役個人の責任追及や、現時点で保有する資産からの回収といった被害回復を目指しています。
通貨オプション取引の問題点
現在、特に問題となっているのは、「通貨オプション取引」と呼ばれる商品です。
通貨オプション取引とは、外国為替証拠金取引を利用し、高いレバレッジを効かせて、少額の資金で多額の投機取引を金融商品の一種になります。
中小企業の場合、メインバンクや融資関係にある金融機関から勧められ、やむを得ず契約を締結するケースも多いようです。
本来は、為替リスクを負っている輸入企業が、リスクヘッジするためにする取引となります。多くの中小企業の場合、実際に為替リスクを負っておらず、リスクヘッジのニーズがないにもかかわらず、為替デリバティブを半強制的に契約させられていることもあります。
企業規模からして、リスクヘッジに必要な金額を超える為替デリバティブを売っている場合もあります。そのことをオーバーヘッジと言い、極めて問題があると思います。
通貨オプション取引ってどんな商品なの?
まず、一番に皆様にお伝えしなくてはならないのが、「商品の設計上、銀行の儲けが大きくなったり、銀行の損失が小さくなるように設計されている商品」であるということです。
通貨オプション取引は、「為替リスクの回避」を営業トークとし、銀行が販売した商品です。仕組みとしては、将来の一定の日に、あらかじめ決められた価格で、一定の金額で、一定数量の外貨を売買する権利をやり取りする取引のことです。
「買う権利」のことをコールオプション、「売る権利」のことをプットオプションといいます。取引形態として、
①コールオプション(買う権利)の買い
②コールオプション(買う権利)の売り
③プットオプション(売る権利)の買い
④プットオプション(売る権利)の売りという4つの種類があります。
そして、権利を買う場合には、プレミアムを支払う必要があり、逆に、権利を売る場合には、プレミアムを受け取ることができます。
とこのように、この時点で既に分かりにくいと思いませんか。買う権利や売る権利を直接の投資対象として、買ったり売ったりするわけです。外貨を買う権利を買えば、円安時のリスクヘッジになります。しかし、外貨を売る権利を売れば、外貨を買う義務が発生します。
円高時に、損失が拡大するリスクがあり、外貨が一定金額に達すると契約が終了する、ノックアウト条件があったり、一定のトリガー価格に達すると損失が拡大する、ギャップレートなどの更に投機性の高い「特約=エキゾチックオプション」が設定されることがあり、より複雑な取引となります。
ここがポイント!
・商品自体の問題性と不要な商品であること
・契約期間が5年から10年の長期契約
為替デリバティブ取引の契約期間は、5年から10年と長期にわたります。毎月~3ヶ月ごとに決済が行われ、決められた相場よりも円安であれば利益が発生し、円高であれば損失が発生します。為替変動リスクをヘッジしたいのであれば、短期為替予約で十分であり、長期契約を締結する意味がありません。
5年から10年と長期契約になるため、会社の経営規模、輸入形態なども転換している可能性があり、そもそもリスクヘッジとして適している商品なのか。そこから始まります。
一般的な為替予約とは異なるため、利益と損失のバランスが見合っておらず、為替リスクヘッジの手段としての合理性を欠いています。
予測困難な不確実性
5年から10年先の外国為替市場の円高円安の予測をするのは不可能です。
昨今の金融政策、経済動向、世界情勢を鑑みると、急激な円高円安の恐れが日々高まっており、個人投資家はもとより、企業にも多額の損失が出る可能性があります。
そんな状況の中、長期期間にわたり、同一金額、同一レートで固定し、企業の資金を拘束する契約は、多額の損失を被る危険性をはらんでいます。円安の局面では利益が得られる一方で、一定限度以上に円高が進むと利益が一気にゼロになったり一時に多額の損失が発生し(ギャップレート)、しかも円高の局面では為替相場の2倍ないし3倍に比例した損失を発生する(レシオ、レバレッジ)というのが典型です。
勧誘方法の違法性
これら各商品の販売方法は、銀行・金融機関とのお付合い等の勧誘によって始まります。契約時に、円高に振れた際のリスクを十分に説明しないまま、勧誘・販売するケースが多く見られます。
為替リスクヘッジをする必要がない企業に対しても、これらの商品を「付き合い」だからといって販売・契約しています。銀行が、融資取引関係における優位性を利用して、デリバティブ取引を勧誘するケースもあります。また、中途解約を申し出た場合、多額の違約金、解約損害金を請求されることとなりますので注意が必要です。
被害救済方法
まず、被害にあった状況をお聞きし、請求が可能と判断すれば、代理人として当事務所が受任通知を金融機関に対して発送します。
相手方と交渉し、お客様の納得する金額提示があれば解決となりますが、ない場合は早期解決として金融ADR(裁判外の紛争解決手続)を利用します。
「時間がかかってもいい」「損失額をしっかりと回収したい」というお客様は訴訟提起し損害賠償請求をいたします。実際の裁判では、適合性原則違反、説明義務違反等を主張します。
また、追加担保を毎日のように請求される点についても、十分な説明がなく、どのような計算方法で追加の請求額が決まるのかの説明についても主張します。
業者や金融機関に重大な説明義務違反がある旨を主張し、契約に基づいて支払った総額、担保金等すべてを返還するよう求めます。
過失相殺を7割~8割とし、弁護士費用を付加し、3,000万円プラス遅延利息の賠償までを業者側に命じた例も存在します。
まとめ
為替デリバティブ商品と言われるものについては、企業側に利益が出始めた頃には、銀行がリスクヘッジするために取引終了し円高に振れたときには、企業側が無限に損失を負います。しかも、契約締結している企業が中途解約をしようとすると、莫大な違約金・精算金の支払いを求められます。
以上のように、外国為替証拠金取引・FX・通貨オプション取引における過去の裁判例では、取引自体につき違法であると判断した例が多くありますので、一緒に頑張って最後まで戦いましょう。