違法性が認められるポイント
先物取引業者に対する損害賠償請求が認められるためには、勧誘・取引に違法性が認められることが必要となります。違法性が認めらる要素を順番に見ていきましょう。
①適合性義務違反(適合性原則)
投資の目的、財産状況、投資経験、投資知識等が不適合と認められる者を先物取引に勧誘する行為を禁止しています。(金融商品取引法40条、商品先物取引法215条)
今まで株などの投資経験の全くない方や資産に余裕のない方などは、本来先物取引のようなハイリスクな取引を行うのに不適当な方といえます。
「新規委託者保護義務」
取引未経験者に取引の始めから多額の投資をさせたような場合には、業者側の違法性が認められる可能性が高まります。
どんな人が認められやすい?
高齢者や年金生活者、無職の方は適合性が認められる場合があるでしょう。
投資目的や投資経験、情報収集力、判断力、知識、年収、財産(資産)、学歴、職歴が対象となります。財産が多くあって、株式の信用取引経験がある方は不利になる場合もあります。
強引な勧誘やしつこい電話で、断りきれずに購入、契約させられた。
長期投資を希望していたのに、短期的でハイリスクな投機商品を分からないまま購入させられた。
取引を行うために必要な知識が不足しているのに、勧誘されて金融商品を購入させられた。
以上の様なケースでは、業者側の「適合性原則違反」が認められる場合があります。
②説明義務違反
先物業者は、一般の投資家の取引を勧誘する際、先物取引やオプション取引のリスクや仕組み、追証制度、元本保証ではないことについて、きちんと説明する義務があります。(金融商品取引法37条の3等)
「断定的判断の提供」
必ず儲かります!などと言って勧誘することを指します。
法律に定められている事項をざっと説明するだけの業者も存在します。
どこまで請求できるの?
証拠金や慰謝料、弁護士費用などを損害賠償請求できます。
③無断売買
金融商品取引業者が、顧客の意向に反して、無断で取引を行うことです。顧客の同意を得ずに無断売買を繰り返すことが禁止されているのは当たり前のことです。
過去の判例から見ても、無断売買の効果は顧客に帰属しないと判断されます。
④過当取引とは
業者が自らの利益であったり、売買手数料を稼ぐために、回数を多く重ねて取引をしたり、顧客の資産に見合わない多額の取引をする又はさせることです。
主な要件としては、「過度の取引」「口座の支配」「欺罔の意図」になります。
顧客の投資経験、属性、知識、資力を無視して、多額かつ頻繁な取引をさせることによって、損失が生じた場合には、不法行為となります。
⑤不当勧誘
金融商品取引のプロである金融商品取引業者が、「絶対儲かります。絶対利益を出せます」というように、値上がりを期待させるような勧誘は禁止されています。
このように、~は確実である。と誤認させるように告げて勧誘をすることは、「断定的判断の提供」があったとして違法となります。(金融商品取引法38条1号、2号)
先物取引における、不確実な相場動向を、確実に予想して利益を出すことは不可能に近く、証券外務員のトークを考慮した場合、断定的判断の提供となります。以上のような虚偽告知によって、顧客が損失を被る危険性が高まるため禁止されています。
・ここがポイント!
不招請勧誘の禁止・勧誘受諾意思の確認義務
勧誘を希望、要請していない顧客に対して、電話や訪問をして、契約や取引の締結をしてはならないとされています。顧客が勧誘を受ける際「顧客の意思確認をする義務」を負っています。
また、顧客が契約の締結をしない意思表示を示した場合、継続して勧誘することも禁じられており、これを「再勧誘の禁止」といい、法律で規定があります。
⑥一任売買とは
業者に取引を任せきりにしている場合のことを指します。取引ごとに顧客の同意を得ないで、売買銘柄、取引種類、数量、枚数、約定価格を業者が決定して取引を行います。
取引業者が過当取引をしたり無断売買をする恐れがあるので禁止されています。
・ここがポイント!
「任せてくれれば、数ヶ月後、数年後には元本が増えています」とか「銀行に預ける金利より高く運用できるから、任せてください」というような場合も、一任売買に該当することがあります。また、形式的に顧客が承諾したとしても、業者の裁量権で取引を行っている場合も、「実質的一任関係」が成り立つケースもあります。
投資のプロである金融商品取引業者が、顧客の資産を運用することは合理的ではありますが、一任売買では、業者に裁量権を与えることになるので、手数料稼ぎのための過当取引を与えかねません。顧客は自己の決定権を持たないため、違法性があると判断されています。
⑦手仕舞い義務違反、仕切り拒否、仕切り回避
顧客が取引の手仕舞い(仕切り)の指示をしたのに、業者がそれに反して手仕舞いを行わないことを言います。「手仕舞い」とは、信用取引、先物取引、オプション取引等の金融商品取引において、反対売買をしてポジションを決済することです。
金融商品取引業者は、顧客から反対売買の指示があれば、手仕舞い・仕切りをする義務を負っています。顧客が仕切りの指示をしているにも関わらず、その指示に従わず、取引を継続(仕切り回避)して損害を与えた場合、金融商品取引業者は違法となります。手仕舞う義務を負っていることをわかっている業者は顧客に対して損害賠償責任を負うことになります。